インプラント治療

インプラント治療を希望される方へ

1950年代の一連の動物実験の後、スウェーデン・イエテボリ大学医学部解剖学教授ブローネマルク博士らのチームによって1965年、初めて患者さんにチタン性スクリュー型インプラント(人工歯根)が用いられました。

以来、デンタルインプラントは歯牙を失った患者さんの咀嚼,審美、及び口腔内の健康の回復に大いに貢献しています。

インプラント治療の流れ

インプラントのメリット

  • 顎の骨に固定するので、自分の歯のように固いものをかむことができる
  • 隣の歯を削らずに治療ができる
  • 長期的に安定した噛み合わせを維持することができる
  • 入れ歯による顎骨の吸収を避けることができる

それまでにも様々なデンタルインプラントが用いられてきましたが、なぜブローネマルク教授らのチームのデンタルインプラント“ブローネマルクシステム”が世界中に広がったかといいますと、おそらくスウェーデンの科学的なバックグラウンドに基づいた医療、あるいは国民性に元を発していると思われます。

このシステムの臨床報告が多くの国際誌に投稿され科学的な根拠に基づいているインプラントであることが浸透たしとことが、世界中に用いられることになった一つの由縁であります。

また一方、私が留学していた当時(1988年から1993年)スウェーデンではデンタルインプラントの顎骨の埋入手術は、特別なトレーニングを受けた口腔外科医、あるいは歯周病医のみに許可されており、その上部構造となる歯冠の部分は、補綴医によって作製されていました。

専門医が治療することによって、高い成功率(デンタルインプラントの保存率)が維持されたわけです。

インプラント治療をする前に

しかしインプラントを考える前に一つ考えなければならないことがあります。
それは、「なぜ歯牙を失ったか?」ということです。

日本人の歯を失う原因の7割は虫歯か歯周病です。
40歳までは虫歯カリエスが抜歯原因の第1位ですが、40歳を過ぎると歯周病が抜歯の主原因になります。

抜歯の主原因
8020推進財団・全国抜歯原因調査 改変(2005)

この二大疾患であるカリエスと歯周病は、歯に付着した細菌性プラーク(歯垢)によって引き起こされたある種の感染症であります。

確かに失われた歯をデンタルインプラントによって回復することも大切ですが、それ以上に、残った歯牙を健康な状態で保存することも、お口の健康、更には人生を豊かにする上で非常に大切なことになってきます。

残存した歯の健康を維持し、あるいは病的な状態になっていれば、これらを回復した後にはじめて、失われた歯牙をデンタルインプラントによって回復するという治療の進めることが大切になります。

ブローネマルク教授もインプラント治療のバイブル「 Osseointegration implant」(1986年)の中でのべているように、

「口腔内の感染症、つまりカリエスや歯周病を完全に治療してからデンタルインプラントを用いること」

が、デンタルインプラントを成功させる必須条件となります。

インプラント治療を成功させるために

さて虫歯や歯周病で歯が抜かれ、かわりにインプラントによって咀嚼が回復され、見た目がきれいになったとしても、歯牙を失ったということから、ご自身の口腔内は、カリエスあるいは歯周病のリスクが非常に高いということが言えます。

インプラントは人工物ですのでカリエスにはなりませんが付着した細菌性プラークにより歯周病の発生機序と同様にインプラント周囲病変が発症します。

現在インプラント周囲炎の確定的な治療方法は見つかっていません。この発症を防ぎインプラントを長期に維持するためにも,また残っている歯を再び虫歯や歯周病で失わないようにするためにメインテナンスは必須です。

当クリニックではスウェーデン・イエテボリ大学歯学部歯周病科スペシャリストクリニックと同質の医療システムに基づいて、同大学大学院卒業の専門医が全顎的な検査の後、治療計画をたて、インプラント治療、メインテナンスにあたっております。

診療内容

インプラント(implant = 植え付けるの意)は人工歯根療法とも言われ、虫歯や歯周病、事故などにより、大切な歯を失った場合に顎の骨(本来、歯根のある場所)に人工の歯根(チタン製の棒)を埋め込み、その上に人工的に歯牙を作ることによって咀嚼、審美の回復をはかる方法です。

インプラントはただ骨に埋められているだけでなく、あごの骨と直接結合してまるで生きている骨として、取り込まれたように直接固定されて支えられ、人工の歯でかむ振動がそのまま骨にも伝わり体の一部のように感じることができます。

例えば、入れ歯を作ってみたものの、食事のとき入れ歯と歯茎の間に食べかすがはさまったり、入れ歯が会話の途中で、外れてしまったりした経験をお持ちの方はたくさんいらっしゃると思うのですが、それは入れ歯が歯茎にかぶせて乗せているだけであるため口の中で動き易く不安定であることや歯根が埋まっていた顎の骨もだんだん少なくなっていき、ぴったり合わせて作った入れ歯もずれるようになり、その上入れ歯が、歯茎にぶつかるその刺激に反応してますます顎の骨がやせ細ってしまうからです。

この点でもインプラントにすると骨の減少を防ぎかえって骨の代謝を促し、健康な顎の状態の維持につながります。

ひと口にインプラントといっても様々なシステムがあり、その基づく理論や特性、治療法、安全性はそれぞれ、異なりますが、当センターではスウェーデンノーベルバイオケア社のブローネマルクシステムとアストラ社のアストラテックシステムのインプラントを行っております。

ブローネマルクシステム

スウェーデン生まれで世界で一番歴史の古いインプラント。
1960年代からスウェーデン・イエテボリ大学で用いられ世界中に広がって用いられています。システム的に一番器材が豊富でどんな症例にでも対応できます。

ペル・イングヴァール・ブローネマルク博士
(スウェーデン・イエテボリ大学医学部 解剖学教授)

1950年代の初め、スウェーデンの科学者ペル・イングヴァール・ブローネマルク博士は、非常に軽量な金属である純チタンが骨の組識と結合するという世紀の大発見をしました。

これは動物実験の時に偶然発見されたことですが、チタンで出来た実験器具が骨に付いて取れなくなってしまったのです。これが現代インプラントのもっとも重要な生物学的原理「オッセオインテグレーション(Osseo-integration)」発見のきっかけになりました。

実は当時の医学界の常識では、金属と骨が結合するなど、とても考えられなかったことでした。けれども、チタンは、生体組織において異物と見なされず、受け入れる性質を持っていたのです。

そこで、ブローネマルク博士はこれを人工歯根(インプラント)に利用する方法を開発。軽くて丈夫な純チタンの歯根が骨と結合し、生まれながらの歯根と同様に歯冠を支えるシステムを完成しました。

「ブローネマルクシステム」と名づけられたこの治療法は、以来年齢、地域を問わず世界各国、70万人以上にものぼる数多くの人々の悩みを解消してきました。現在、この優れた技術は歯の治療だけでなく、関節、顎顔面などなど他の部分の応用に向けても、精力的に研究が進められています。

インプラント治療の第一段階は、チタン製の人工歯根をあごに埋入することです。

このチタン製の歯根は徐々に骨に固着し、生まれながらに持っている歯根と同じ様に歯冠をしっかりと支えます。この安全性によって、多くの人々の口腔機能と生活の質が向上しました。

天然歯根に支えられている歯冠は、歯の機能的な部分です。歯冠の外側の層はエナメル質という身体の中でも最も固い組織から成っています。人工歯冠は歯茎の中にある人工歯根にしっかりと固定され、その形と色は周囲の歯と同様に作られます。

ブローネマルクシステムによるインプラント治療を行うと、抜けた歯の周囲の骨の喪失が抑えられ、また回復してくることさえあります。歯科インプラントは、歯の機能と外観を元通りにすることができる優れた治療法なのです。

アストラテックインプラントシステム

世界的な制約、医療器具メーカーであるアストラゼネカ社のグループ企業、アストラテック社によって開発された生体親和性に優れたスウェーデン生まれのインプラントです。前歯部の症例に適しており、世界中で多くの人々に愛用されています。

インプラント治療の流れ

まず口腔内の全顎的な診査、診断を行います。
口腔内に疾患(むし歯、歯周病、歯根の病巣)が残っている場合、インプラントの予後に大きな影響がありますので、こういった疾患の処置が終わった後、インプラント治療に入ります。

治療も残っている骨の質量及び噛み合わせ等の検査の後、インプラントが適応であれば各個人の口腔状態にあった治療計画を立ててインプラント処置に入ります。

  1. Step.1

    まず最初のステップはチタン質のインプラント(人工歯根)を骨の中に埋め込みます。外来の小手術で一時間程で済みます。インプラントは上顎で数3ヶ月、下顎で6ヶ月歯肉におおわれた状態でインプラントが骨に癒着(オスチオインテグレーション)するのを待ちます。チューリップにたとえると球根を秋頃に土の中に植える段階に相当します。

  2. Step.2

    次に人工の歯根とインプラントを結ぶスクリューを取り付けます。チューリップでいえば、春頃に芽が出た状態といえるでしょう。

  3. Step.3

    そしていよいよ最終段階に入ります。各個人の顔ぼうや噛み合わせに合わせて最適なサイズ、形態、色の人工歯をインプラントに取り付けます。審美的にも、咀嚼の上でもほとんど天然歯と同じ状態に回復が可能です。

  4. Step.4

    チューリップにたとえると、いよいよ美しい花が開花した状態です。もちろん人工物ですので日頃の手入れは大切になります。

当センターでは、世界中で使われているスウェーデンの Bronemark Implant SystemとAstra Implant Systemを用いて、専門医(スウェーデンの大学院卒)によって治療にあたっています。

インプラント治療の流れ
(1歯欠損の場合)

患者さんは上顎前歯が欠損していたため、審美と機能の回復を主訴に来院されました。

最初のステップはチタン性のインプラントを骨の中に埋入することに始まります。埋入後、3ヶ月から6ヶ月間歯茎の下で骨とインプラントが付くのを待ちます。

同部位にインプラントが埋入されました。(同部X線写真)

次に、インプラントに人工の歯を取りつけるための小さなスクリュー(アバットメント)を取り付けます。

インプラントに人工の歯を付ける小さなスクリュー(アバットメント)が取り付けられた状態。

インプラントに小さなスクリュー(アバットメント)が取り付けられました。(同部X線写真)そしていよいよ人工の歯が入ります。

小さなスクリュー(アバットメント)に取り付ける前の人工の歯

人工の歯がインプラントに取り付けられました。

人工の歯がインプラントに取り付けられることによって審美と機能が回復されました。

インプラントに小さなスクリュー(アバットメント)が取り付けられ人工の歯が入りました。

インプラント治療の流れ
(多数歯欠損の場合)

患者さんは右下の奥歯を失い物が噛めないこと(咀嚼障害)を主訴に来院されました。

最初のステップはチタン性のインプラントを骨の中に埋入することに始まります。埋入後、3ヶ月から6ヶ月間歯茎の下で骨とインプラントが付くのを待ちます。失った歯のスペースによって埋入するインプラント数を決めます。

次に、インプラントに人工の歯を取りつけるための小さなスクリュー(アバットメント)を取り付けます。そしていよいよ人工の歯が入ります。

右下奥に3本のインプラントが埋入され小さなスクリュー(アバットメント)が取り付けられた状態。

インプラントに小さなスクリュー(アバットメント)が取り付けられた状態。(同部X線写真)

失われた歯のスペースに合った数の人工の歯がインプラントに取り付けられました。

インプラントに取り付けられた人工の歯により物が噛めるようになりました。(咀嚼機能の回復)

インプラントに小さなスクリュー(アバットメント)が取り付けられ人工の歯が入りました。手前の歯が虫歯だったために、メタルボンドクラウン(ポーセレン冠)が被せられました。

インプラント治療の流れ
(全ての歯を失った場合)

上顎の歯をすべて失い、総入れ歯では良く噛めず、また、動く、よく落ちる、当たって痛い、気持ち悪い等の主訴があり来院されました。

最初のステップはチタン性のインプラントを骨の中に埋入することに始まります。埋入後、3ヶ月から6ヶ月間歯茎の下で骨とインプラントが付くのを待ちます。残っている骨の状態によって埋入するインプラント数を決めます。

次に、インプラントに人工の歯を取りつけるための小さなスクリュー(アバットメント)を取り付けます。

上顎の骨の中にインプラントが埋入されました。そしていよいよ人工の歯が入ります。

顎の状態に合った数の人工の歯がインプラントに取り付けられました。

インプラントに支えられた固定性の人工の歯が取り付けられ、すべての症状が改善され、患者さんは元の歯があった時と同じように、健康的な生活をおくれるようになりました。

審美性も回復され入れ歯だった時から比べて周囲の目も変わり患者さんも自信を取り戻すことができました。

インプラント治療を成功させるためのポイント

抜けた歯の外観と機能と、歯根から歯冠まで修復できるのが、インプラント治療です。人が物を噛むときの圧力は、実は想像以上に大きいもの。けれども、丈夫なインプラント治療なら、天然歯の歯根と同様に機能します。また歯根の歯や形も、最新の歯科技術によって自分の歯と同様に作ることが可能です。

残った歯がある患者さんの場合は、その歯を保存するための適切な治療を行い、今まで以上に歯のお手入れを入念にしていただくことが大切です。それが自分の歯を失わない最大の方法なのです。

失った歯は二度と戻ってきません。インプラント治療は失った歯を取り戻すのに大変優れた治療方法ですが、自分の歯と同様にきちんとしたメインテナンスは必要です。お手入れをしていただくことで、回復した歯の機能を恒久的に維持していくことが可能です。

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